人の世に妬み嫉みはつきもの。今日は喜怒哀楽の「喜」を帽子に隠し家を出る。
太陽が育てたトマトは陽の匂い。それをまるで太陽の申し子がポンと手渡し。
親を待つ子かはたまた「命短し恋せよ乙女」の志村喬に似た人か。
あの話の続きか。お天道さまの下で声高に言えぬ身内の重い話。
ひとり山道。幼き頃摘んだ桑の実がたわわ。夏帽子たちまちは獲物のかごに。
夜星朝星を抱いて生きた篤農の父。いつしかその子も父の帽子を被って。
山男の「純」は山に育てられたからだろう。街の交差点では涼風に出会えぬ。
突然目標を失った。嘆くな高校球児。青春の蹉跌は大人への一里塚。
何から逃れ何を忘れたいのか遍路笠。心を無にして歩く向こうに求めるものが。
あの玉音から75年。戦後は遠くなるばかり。父の鉄兜が戦争をポツリ。
一族を祀る菩提寺。あの夏帽子は誰だろう。系譜は代々と伸びていく。
それ程自然に同化していたのか。自然に優しい人間は自然が知っている。
コロナ禍の今まさに看護の担う大きさを知る。ナイチンゲールの思いを胸に。
東風を待つのは菅原道真だけではない。幼子は春の真ん中で帽子と遊ぶ。
誰に飛ばされた帽子か。持ち主を探し転がる夏帽子。表現の妙。
ああ、あの時を一気に巻き戻す角帽。青春のドキドキは今もなお。
色あせた夏帽子。それでも捨てられぬ訳は色あせぬ深い情けがあるから。
お気の毒に炎天にも笑顔絶やさぬ地蔵さま。どれだけこの笑顔に助けられたことか。
まだあの頃の父がいるような。藁帽子に残る父の香と思い出と。
すらりと伸びた手足。見かけぬ姿の顔に被せた夏帽子。木下闇が深くなる。
一人居の寂しさを見抜く赤とんぼ。人生は捨てたものではない、と赤とんぼ。
温暖化阻止を叫ぶ少女グレタ。少女に託すしかない各国の貧しい政。
あまり知られたくない耳の衰え。耳まで届くしゃれた夏帽子で行動範囲も。
誰かが語り継がねば。人はどうして歴史を学ぶのか、と戦闘帽がつぶやく。
あの帽子には夢という宝ものがいっぱい。普通の帽子も工夫次第で宝ものに。
コロナ禍で途絶えた黄色い帽子がまた戻ってきた。子どもは今も昔も国の宝。
どなたの厚意か。信心深き村人か。争いごとの絶えて久しい春霞の一村。
白球に明け暮れたあの頃。時代は平成から令和。蝉しぐれが泥んこの昭和に。
歯の白は日焼けの黒との対比ではない。太陽の下の子らに共通した白という発見。
そうだ。運動会はわんぱくが最も光った。鼻をひくひくさせた顔は今も。