再び戦争を許すまじ、との誓いが揺れている。石つぶてより言葉かけを。
切り拓いた先人たちは例え無名でも偉大だった。切り株転ぶあの荒地に今は実りの波。
自然は偉大だが負けてはおれぬ。海の青さが戻る今、やはり海で生きよう。
このごつごつとした節くれの手が来し方の全て。饒舌とは組まれたこの手のこと。
「巧言令色鮮仁」。言葉巧みの人よりも真実をぽつりぽつり。
「墓に蒲団は着せられぬ」と在りし日を今頃になって悔やむこと多し。
まるで乾いたスポンジが水を吸うように知識欲旺盛な子らの瞳のキラキラと。
七年土中七日の地上。あの鳴き声。命の呼びかけだ。
盆に集まった久しぶりの同胞たち。あの頃見上げた柱の高さは今。
いくつものドラマを生んだことだろう。見る人を感動させるのはあのひたむきさ。
朝に朝星夕に夕星を仰いでの父。篤農家と言われた父の腕も細くなり。
とても人間の仕業とは思えぬ原爆投下。どんな理由があろうとも許しては。
こんなにも積もる話があるなんて。昨日のことは忘れてもふるさとの山や川のことは鮮明。
戦争を語り継ぐ、ということは再びあの歴史を繰り返させぬということ。
手で語る、瞳で語ることのできるのは赤ちゃんの瞳が空を映すから。
温暖化、などという生易しさではなく今夏は沸騰化。ペンギンの背中が細る。
あの時は言えなかったが今なら言える。母さんの子でよかった。
自然に逆らわず風や土を教師として生きた父。そんな父の血を継いで。
これまでの八十八の仕事が今報われた。時に政に翻弄される農ではあるが。
六日、九日、一五日は八月の月。そして平和を語る月。
あの戦争を語り継ぐ人がだんだん少なくなっていく。後世に伝えることの難しさ。
月にまで触手を伸ばす人類という欲深き者。かぐや姫伝説はそっとそっと。
話せば長い恋物語もあの渦巻が尽きるまで。
自己弁護などというものは短ければ短いほど説得力があるもの。
一年に一度の逢瀬、七夕伝説に心躍らせたふたり。その友ももうあの星に。
足音を聞いて育つという花に言葉と水を注ぐ。少し鋭角な花芽も膨らんで。
青春の蹉跌、というものは大人になるための関所。そしておとなに一歩ずつ。
話はまた振り出しに。ラチがあかないということを円周率とは見事。
この黄金の波がこれまでの苦労を。種籾から収穫までの通信簿今ここに。
種を繋ぐ、という命の根源の営みがひたすら鳴くという手段が全ての蝉。