帰らなかった理由は単線だから。ふるさとは今も変わりはないだろうか。空の向こうに聞いてみる。
バンザイの両手のいくつかに嫉みや妬みがないと誰が言えよう。置いていかれる寂しさも。
これからは人間よりも土と関われ。これ程の祝意が果たしてあるだろうか。
色々あって今は冬の日溜り。波乱の果てにつかんだこの穏やかなひとときを大切に。
「歓呼は高く天を衝く」。あれはまぼろし。今もこの地のどこかで誰かが歌う。悲しき壮行歌。
失ってから気付くことの何と多いこと。「男は黙って」の昭和人。真っ赤な花も詫び状の一行か。
海の青も知らずに育った姉妹に海鳴りと潮の香りを届けよう。
ああ、こんなにもあの人は私の中に存在していたのか。ぽっかり空いた穴の大きさがそれを証明。
あの澄んだ瞳に何の罪があろうか。ガレキの中に佇む母と子にかけてやる言葉も。
最悪を想定しての訓練。しかし、修羅場でもこんなに落ち着いて動くことができるのか。
会うたびに成長していく曾孫。帽子編む心は冬の陽だまりのような温かさ。
さよならがなかなか切り出せぬ。あの月も一緒に遠回りしてついてくる。
この火にあたると風邪ひかぬ、とは古老の言。これからきっと良いことがありそうな。
何でもない人だったのに。送ってもらったそのきっかけでいつしか強く意識するように。
ふるさとからの定期便。餅は母から。その隙間を栗はきっと祖母。伝わる心とこころ。
先祖はナスの牛で帰られたのか。あの西方がことのほか明るいと感じるのは気のせいか。
目標がなければ老いはきっと加速する。「キョウイク」は「今日行く」と誰かが言った。
まるで空気を運ぶかのよう。人口減とコロナ禍の働き方改革の果て。
あの時は勇気がなかった。今なら言えると思いたった時、その相手は西方の彼方。
来し方の「ああすれば良かった」が十指で足りぬ。それでも今あることを思えば。
お別れが時にめでたいことも。天から授かった命に降りそそぐ花吹雪。
木守柿にこれから冬を迎える小鳥が集う。柿の赤と空の青が日本の原風景なのだ。
元気でいるだろうか。この小包が声を聞くきっかけとなってくれればそれでいい。
あれから五十年。送り狼も今では髪にチラホラ白いもの。今では私の手を引いて。
そうか芋は作り手に似るのか。整った形よりひねくれの味が舌に心地よく絡む。
ああ、星がこんなに。見送るきっかけで冬の銀河をふり仰ぐ。これもまた厳しい冬の演出だ。
心からの詫びの証としての美人切手。相手にこの気持ちは届いたのだろうか。
その昔、「月がとっても青いから」。ふり仰ぐ月もにこっとふたりを見守ってくれるだろう。
空を覆うミサイルや無人機。一日も早い平和を、は世界の祈り。
初恋というやつはいわゆる経年劣化を知らぬ。どれほどの年月が経とうが心躍りは今もなお。