主なき柿の侘しさ。実れば実るほどその思いは一層募る。
黄金の波を得心したように見渡す案山子。そろそろお役目ご免か。
いつもの季節母からの手紙を添えて来る便り。土の香りと「風邪ひくな」の細い文字。
太陽をいっぱい浴びた柿だから。この柿すだれの光景は先祖代々の風物詩。
ヒマワリの国、そして麦の国ウクライナ。人はどうしてこんなにも愚かなのか。揺れる麦に問われる。
こめかみの青すじをなだめて生きて来た男の顔はまさしく履歴書。
紅葉という色で秋の訪れ、は一般的だがどんぐりを踏む音で知るとは。耳で知る秋。
リハビリの甲斐あり。これからは試歩の杖を捨て一歩ずつ。
木守柿の責任は枝いっぱい実らせること。そしてこの身は一羽の鳥のために。
歓声が聞こえる。こうして土に親しみ大人に近づいていくのだ。のどかな風景。
あの日の米つきバッタも当選すれば遠い過去の人。人らはそれらを繰り返し。
田植え機やコンバインは農作業をとても楽にした。収穫の米と一緒にイナゴも。昆虫食時代の先駆けに。
風が運んでくる命。気流に乗ってどこまでも。風媒花の代表。
実りを待っているのは人間だけではない。カラス、イノシシ、そしてノワケも。
ふる里の柿の色は夕焼け色。そして遠くから「ごはんだよ」の母の呼ぶ声。
あの時があったから今がある。それは演歌歌手だけではない。僕も私も。
カラスは知恵者。そして人のものを横取りする煩悩多き鳥。
実らぬものの代名詞、それは初恋。しかし、気まぐれなキューピッドも。諦めることなかれ。
あのキャタピラーの下に麦の一粒ひとつぶ。麦は時に人類さえ。歴史に学ばぬ哀れな人類か。
一年の始めの決意が墨たっぷりの文字の太さに。貰った人もまた決意新たに。
記帳するたびに労働の価値を確認。金利は当てにならないが流した汗に正比例する残高。
天才と言われる人ほど隠れた努力を怠らない。水鳥の水面の下の水掻きもせわしなく。
この飛翔体一つでどれほどの食糧が賄えるのか。国民の目はうつろ。
「働く」ということばはこの木にも言えるのか。いっぽんの働き者の木にはリンゴがたわわ。
「やっぱり友だちのままでいましょう」の別れことばほど切ないものはない。
食糧危機とか自給率とか。虫食い状態の耕作放棄地、国の姿勢を稲穂に問われ。
収穫の米を両手で掬ってみた。手にずっしりと。「地球儀が傾く」の表現は秀逸。
頭を垂れるのは稲だけではない。雑草と言われる私もまた。
果たしてこの星に平和など来るのだろうか。人類の歴史は戦の歴史ということをつくづく。
同じ意味でも表現の仕方で。「丸い卵も切りようで四角」はいつの世も。