人の命はこの匙の小さなくぼみほどのもので繋がれるのか。改めてしる命との対比。
太陽と対峙するヒマワリに何度励まされたことか。あの立ち姿を来年もきっとの種袋。
そうだ。確かに5年前まで妻は生きていた。歳月の厳しさを教えてくれた国勢調査。
みそ汁の具は些細なことではない。時に命の全部と思える時も。
食べるという行為は命にゼンマイを巻くこと。箸の動きにそれを重ねる。
生きる権利は人にも獣にも。自然に分け入ったのは人間かもしれない。
本当に死んでしまうのは今生きている人たちに忘れ去られてしまう時。
赤子の手は間違いなく果てしなき未来を掴んでいる。
人は生きるために命を頂く。野菜も魚もそして肉の命も。
母から子。一子相伝の漬物樽も重しにも醗酵菌が静かに息をする。
転んで起きる度、手にいっぽんの藁が。与えたのは父か母かはたまた神か。
土を耕し種を蒔く。やがての小さな緑に背中を押され励まされ。
パンのみに生きていることに恥じることはない。思想や哲学だけでは食えぬコロナ禍
ただひとりのためだけに生きることの尊さ。それもまた人生。
再びこの川に戻ることができるのは生きる望みを棄てなかった魚たち。
戦後は遥か彼方。急ぐまい。一歩いっぽを確かめて。
太陽にかざした手はまるで私の履歴書。皺の深さとその数が波乱を物語る。
人間の真価が問われるコロナ禍。人は弱さと強さを合わせ持つ。
肩書きが取れてやっと人間に戻った。誰はばからず泣いたり笑ったりできる。
そんなものだ。明日の「楽」のために蟻は炎天下を働く。
不器用な私を広い胸で受け止めてくれた農。この鍬、決して錆びさせてはならぬ。
掛け声をかけなければ動かなくなったこの体。掛け声は体への栄養補給という効果も。
人の寿命は今や100年時代。まだあと30年の道のりのある古稀。
ひたすら鳴くことでしか表現できぬ蝉に空蝉と現身(うつせみ)を重ねる。
動くことが命を守る術なら動かぬこともまた。エネルギーはひたすら命のために。
難病が教えてくれた命の重さ尊さ。病を背負って生きるのもまた別の意味合いが。
生きろ生きろと手を差し伸べる藁の数。生かされていることを教えてくれたその一本いっぽん。
生きてこその人生。生きていればこその指きり。やがて散る花の下で。
ささやかな一日に感謝。一日二合の酒が減る。
一足す一は学んだが魚の獲り方や干し柿の吊るし方は自然が教えてくれた。