野はみどり輝き空にはひばり。引きこもりがちな母に外にも出てと贈った靴。
ボランティアには行けぬが心を寄せることは。一日も早い復興を、と祈る。
どしゃ降りの中をふたりで歩いた雨の街。雨という障害がまた二人を繋ぐ。
この憂き世を抜け出すためならば少々の痛みはなんのその。その向こうには。
人類の歴史は戦の歴史。独裁者の靴は人権などタバコの火を踏み消すように。
時代はいつも国民の知らないところで。今耳を澄ませば遠く近くに軍靴の音が。
土に生まれて土に還る。それもまたよし。せめて一度は革靴を、との夢。
この靴を履いてどこかに行こう。そこには一体何が待っているのだろう。
箱の中には忘れるこしのできない思い出の靴。それは青春の代名詞ともいえる靴。
どこに行ったんだろう。きっとあの夜の狐かも。新美南吉を読み返す。
よく跳ねる靴。まるで音符がついたよう。表現が見事。
さあこれから仕事と立ち向かう。シャキーンと背すじを伸ばして立ち向かう。
確かに夢もあった。ビルの谷間を靴音を響かせて。その夢も果たせぬままに。
さあ、行こう。靴がしきりに誘う。野も山もいよいよ緑を増してきて。
あの月まで届けと漕いだブランコ。確かに蹴り上げた靴は月まで届いた感触。
お互いを労りながらながらのここまでの旅路。靴の底の減りを庇い合いながら。
シンデレラになる夢はまだまだ捨てぬ。そのためのレッスンは続く。
始めは馴染めなかった野良仕事。収穫の喜びが教えてくれた野良の靴。
この川をとても越えられそうになかった私の恋。靴が背中を押してくれた恋。
この雪が溶けたら花が咲きやがては緑の稜線が。登山靴が夏山へと唆す。
ああもう帰る時間。時計はやがて約束の12時を指す。急がねば。
きつい、汚い、危険の3K職場。それでも社会に貢献する職場。安全靴光る。
その一歩から始まるリハビリ。またあの日あの時のようにと靴が言う。
どうして人類は歴史に学ぼうとしないのだろう。軍靴に踏みしだかれた歴史も。
カツカツと命の上を歩いていった軍靴。せめて子や孫たちにそんな日は。
靴が学校に行こうとささやく。そろそろ靴のことばにも耳を傾けよう。
いつでも会える準備はできています。そのための新しい靴も買いました。
さあ、これからは海や野山にも自由に行ける。勤めの革靴からスニーカーへ。
少し無器用で、少し偏平足で。それでも両足を踏ん張って生きてきたことを。
ぬかるみに長靴一つ置いてきた。振り向けばあそこ、ここにも。