梅干しははみ出ても母大局を見失うことなし。母の梅干しだけを引き継ぐ私。
あの賑わいはいったいどこに。そういえばあの喧噪も人の人の温みも暖簾と共に。
害獣や害鳥から豊作に貢献してくれたかかし。あの破れ帽子は父のもの。
喜びも苦しみも分け合う台風禍。はんぶんこの握り飯を行き交う心。
昔おくどさんで炊いていたご飯。この火加減がめしつぶを立たせる。
海は海鮮、山は和牛のとろろ丼。海には海の山には山の「美味い」あり。
母の手のいつも自在なにぎり飯。不揃いと言う名の愛もありぬべし。
シューと吹く蒸気に五感をくすぐられ。幸せとはいつもささいなことである。
母の手は魔法。ほっぺに母の味という魔法の忘れ物。
何をしても上がらぬ「うだつ」。お陰で飯炊きだけは上手になった。
遠くにしてしまったふるさと。個人が好きだった牡丹餅で乞う許し。
そう。誰もがあやかりたい当代一の勝負師藤井聡太。同じものを食ってもー。
太陽の下で汗をかけばの握り飯。健康こそがを教えてくれた握り飯。
いつ後進に道を譲るのか。いくつもの逆境を乗り越えてきた「麦ごはん」。
小鳥の声で起こされた。茶粥を啜り新たな一日が始まる。
物言えば唇寒しいつの世も。分かってはいるが未だに残る少しの正義感。
米一粒で物の大切さを教えてくれた母。そして今、私も母の子育てを。
一家団欒を絵に描いたような夕飯。このひとときをいつまでも。
これまで飯粒の一つひとつに頓着しなかった。母となった今その一粒が。
今日の無事を仏さまに感謝。そういえば仏飯は子供のころのおやつだった。
たんすの奥の和服が一握りのものと交換された昭和の一ページ。
命を支えてくれる米の一粒ひとつぶ。この小さな結晶に宿っている光り。
帰省した大きな理由の一つが母さんのお結び。いくつになっても。
衣と住はたとえ粗末にしても食は命。今日よりも明日への夢あり米を研ぐ。
典型的な家父長制の昭和のわが家。ふろめしねるの父がいた。
手当たり次第口にする幼児。当然銀の舎利さえホッペにくっつけて。
景気の陽ざしが時に底辺の暮らしにも。今日は奮発栗ご飯。
まるで寅さんの世界。幸せっていうものはこのようなひととき。
誰ひとり欠けることなき晩ご飯。ごはんのゆげがくりやに満ちる幸せどき。
年老いた母はまるで仏さまのように穏やか。顔に飯粒くっつけて。